心配無用! 人生は依頼者が決めてくれる

無題

 明日、全国青年司法書士協議会 第48回全青司いばらき全国大会が開催されます。寄稿文を依頼されていましたのでここで紹介します。なお、参加される方には配付されると思われます。

 全国の青年司法書士のみなさん、こんにちは。『志動』をテーマとする全青司いばらき全国大会の開催にあたり、私の経験や考え方が少しでも参考になればと考え、寄稿させていただきます。

 私は平成2年登録ですので、26年以上司法書士をやっていることになります。司法書士はマネーライセンスだと思って開業しましたので、何かに正義感を持っていたとか特定の分野で活動したいなどという考えは全くありませんでした。

 そんな私がクレサラ問題にのめり込むようになったのは、開業直後に受任したいわゆる街金の担保抹消の依頼でした。担保抹消後、債務者の方が「まだ他にも借金があるんです」と相談に来たのでした。当時は、まだサラ金問題はほんの一部の弁護士が対応していたにすぎず、司法書士にいたっては全国で指折り数える程しか扱っていなかったと思います。開業したばかりの私は「サラ金問題」の存在すら知らず、どのように相談にのればいいのか全くわかりませんでした。

 「まあ、とにかく話を聞かせてよ」ということにしましたが、アドバイスする言葉も見つからず、まず、持っている書類を見せてもらったところ、裁判所から届いている電話加入権の差押命令や年利40パーセント前後の率で利息の契約をしている数社の契約書でした。私は、それまでもサラ金の広告などを見て、書かれている利率が利息制限法を超えているなあ、と何気なく思ったことはありましたが、現実の相談を突きつけられて、まず、ここから紐解かなければなりませんでした。

 これが私のクレサラ問題との出会いです。詳しくは、ブログをご覧ください。

でも、今考えてみれば、その時、受任を躊躇していたらその後の私の人生は閉塞的な状況に入り込んでいたと思います。言葉で表せないような理不尽さを感じ、何か解決方法はないものかと考えていろいろと調べ、同じ県内に「指折り」の中の一人である芝豊司法書士がいたことで、その後の私の人生のレールが曳かれていったのだと思います。

 その2~3年後でしょうか、全青司の会議でもサラ金問題の話がさかんに出るようになり、サラ金問題にこれまで以上に司法書士がかかわるようになっていきました。そして、私も芝さんといっしょに全国から研修会講師に呼ばれるようになり、いったい何十箇所でお話をさせていただいたのかもわかりません。

 また、出版社からも本の執筆を依頼されるようになり、正確に数えたことはありませんが、共著も含めると20冊ぐらい執筆したと思います。
事務所には、口コミで多くの多重債務者が相談に来るようになっていき、最も多いときは年間で200件の破産申立てをしたこともあります。電話で相談を受けつつ必要書類の指示をして、事務所で面談を行い、翌日には破産申立書の提出という日々が続きました。当時は激しい取り立てから債務者を守るためにはそのような過酷な執務を強いられていましたが、「助かった」「死ぬのを思いとどまってよかった」などという言葉に、逆にこちらが救われたものでした。

 平成初期から現在までの多重債務被害の救済の歴史は「多重債務被害救済のこれまでと今後の課題」(「市民と法」100号41頁 民事法研究会)に書かせていただいていますのでご覧いただきたいと思いますが、特に平成14年司法書士法改正までは、ヤミ金、システム金融、商工ローン、特定調停法施行、個人版民事再生法改正など、新しい問題が目まぐるしく登場してきました。

 これらの新しい問題に対する対応方法は自分たちで作っていくしかありませんでしたが、その対応方法が事案解決に役立ち、全国に定着していく様を見るのは実務家冥利に尽きるものです。また、そうした勉強を通じて仲間同士の結束はどんどん強くなっていったのだと思います。
このように、平成14年司法書士法改正までは、多重債務問題は新たな問題が目まぐるしく現れ、その都度対応を迫られていましたが、平成14年改正を機に司法書士の執務方法が平準化され、出資法改正などもあって、今では多重債務問題は沈静化していると言っていいでしょう。

 さて、こうして振り返ってみると、マネーライセンスだと思って開業した私が、ある債務者との出会いをきっかけとして次々と新しい課題に直面する中で自然に私の人生が決められていったと思うのです。開業当初、大勢の司法書士の前で講演をするとか、書籍を執筆するとか、日司連の委員に就任して委員会活動を行うなどとは全く想像していませんでした。すべて、依頼者の問題や課題を解決しようとする中で人生のレールが決められていったのです。

 ですから、「社会問題に取り組まなければならない」と気負う必要はないと思います。目の前の依頼者が抱える問題を考える中に、きっとみなさんの『志動』が潜んでいると思います。それを誠心誠意対応することにより、多かれ少なかれ問題意識を持ち、社会の諸問題に関わることに繋がっていくと思います。そして、10年後、20年後に振り返って見たとき、「自分の人生は依頼者が作ってくれたんだ」と実感できると思います。
さて、紙面も少なくなってきましたので、私が今後取り組んでいきたいと思っていることを簡単に紹介しておきます。

 簡裁代理権が付与されて10年以上が経過しましたが、司法書士の訴訟スキルは上がっているでしょうか。私はむしろ下がっていると感じています。それは、定型的な過払事件ばかり取り扱っていたために、現状に満足し、思考停止状態に陥って、少しややこしい事件になると対応できないという方が多いのではないかと思われるからです。一言でいえば、リーガルマインドが不足しているではないかと思うのです。

 さらに言えば、簡裁代理業務や裁判書類作成業務における執務が雑になっていないか、ということです。これも、事実関係に争いのない過払事件ばかりを扱っていた弊害と、簡裁代理権等の権限にあぐらをかいてしまった結果だと思います。

 法律専門職能である以上、リーガルマインドは常に高める努力をしなければなりませんし、そうしなければ法律専門職能が社会問題に対峙する意義も見出せません。

 そこで、もしも私の経験が役に立つのであれば、当面の活動として、若い司法書士の皆さんといっしょに、相談のあり方、その責任と義務、事案の見方、具体的な裁判実務のやり方などを考えてみたいと思っています。そして、一人でも二人でも人生のレールを曳くお手伝いをすることができれば嬉しく思います。

 迷わなくても大丈夫です。あなたの人生は他人が勝手にレールを曳いてくれます。それを真正面から受け止めればきっと周りの景色が変わってくるはずです。いばらき全国大会で大いに刺激を受けてください。きっと数年後、想像もしていなかった自分に変化している筈です。