民法改正により、振り込みにより支払った場合の弁済の時期が明確にされたと聞きました。契約実務上、注意すべき点はありますか。

 改正民法477条では、「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる」と規定されました。

 改正前までは振り込みにより支払った場合の弁済の効力発生時期についての規定はなく、解釈にゆだねられていました。

 たとえば、振込手続は当日に行ったが金融機関の営業時間の関係で着金が翌日となったり、金融機関側のシステムトラブルにより当日に送金することができなかったような場合が考えられますが、改正民法では、いずれも支払先の預金口座に入金がされ、相手先が金融機関に払い戻しを請求することができる時に弁済の効力が生じることを明確にしました。

 したがって、契約書の中で弁済の効力発生時期について、民法の規律どおりに定めるほか、債務者が機関機関に対し振込振手続きを行ったときに弁済の効力が生じることと定めたり、通常であれば債権者の口座に着金すべき時に弁済の効力が生じることと定めることが考えられます。

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民法改正により、取引先が有する公共工事の請負代金請求権(譲渡禁止特約あり)の差押えについて今と変わることがありますか

 改正民法466条の4第1項は、「第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない」と規定しています。改正民法466条3項は、当事者が譲渡制限の意思表示をした債権の譲渡がなされた場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができるという規定ですが、債権差押の場合にはこの規定を適用しないことを明らかにしています。

 なお、このような場合に、仮に、債務者の抗弁を許すとなると、当事者の合意により差押禁止債権を作ることができることになってしまうため、妥当ではないと考えられています。

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民法改正により、取引先がA銀行に有している定期預金を譲り受けることができるようになったのですか。

 譲り受けること自体は可能と考えられます。しかしながら、預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権について譲渡制限の意思表示があるときは、A銀行は、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人に対抗することができ、支払いを拒むことができます(466条の5)。

 預貯金は、通常、譲渡を禁止する特約が付されており、これは周知の事実です。したがって、定期預金を譲り受けても、通常は「譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった」ということになると思われます。

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民法改正により譲渡禁止特約のある債権であっても有効に債権譲渡ができることになりましたが、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者はその債務の履行を拒むことができるようですね。では、その場合に譲渡人が破産をしてしまったら、譲受人は何もできないのでしょうか。

 譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができます(466条の3)。

 したがって、譲受人は、供託金から回収することができるということになります。

 なお、これは譲渡人が破産した場合であって、譲渡人が民事再生や会社更生した場合には適用されません。

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改正民法施行後、譲渡制限の意思表示があった債権が譲渡された場合、債務者としては、譲受人の善意·悪意、無重過・過失の判断をすることができません。このような場合、債務者が債務を免れるためにはどうしたらいいでしょうか

 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができるとされています(466条の2第1項)。したがって、債務者は供託することにより債務を免れることができます。

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連帯債務者の一人について時効が完成した際の効果は相対的効力に変更されましたが、その法的効果について、具体例で説明してください

ご質問のとおり、連帯債務者の一人について時効が完成した場合には、改正前は絶対的効力を有するとされていましたが、民法改正により相対的効果に変更されました(民法441条)。

 たとえば、甲、乙及び丙が300万円の連帯債務を負っており、甲の債務について時効が完成したとしても、相対的効果とかないために、債権者は、乙、丙に対して300の万円の請求をすることができることとなります。

 また、445条は「連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。」と規定していますので、乙または丙が債権者に弁済した場合には、時効が完成している甲に対して求償することもできます。

 さらに、442条1項は「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する」と規定していますので、仮に、乙が債権者に対し60万円の弁済をした場合においても、乙は甲及び丙に対してそれぞれ20万円ずつ求償することができることとなります。

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以前、当社の取引先が有する公共工事請負代金の譲渡を受けようとしたところ、債権譲渡禁止特約があったために断念しました。民法改正により、このような譲渡禁止特約の付された債権も譲り受けることができると聞きましたが。

 公共工事の工事請負契約では、請負代金の譲渡を禁止していることが多いようです。民法改正前では、このような譲渡禁止特約が付された債権を譲渡することは原則として無効であるとしていました。そして、例外的に、その債権の譲受人が譲渡禁止特約があることを知らず、かつ知らないことに重大な過失がなかった場合には、譲受人に対して、無効であることの主張をすることができないとしていました。

 しかし、債権の譲渡性に着目して資金調達が盛んに行われることになった現在、特段の理由もなく定型的に譲渡禁止特約を付していることがこの資金調達の妨げになっているとの批判もあったようです。

 そこで、466条2項では、「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」とし、譲渡禁止又は制限の意思表示がある場合でも、その債権の譲渡は有効であることとされました。

 したがって、ご質問のとおり、譲渡禁止特約の付された債権も有効に譲り受けることができることになります。

 しかし、債権譲渡自体は有効であっても、債務者は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、その債務の履行を拒むことができます。なおかつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することもできます(466条3項)。

 ご質問の趣旨からすると、貴社は、譲渡禁止特約が存在することを知っていた(悪意)と考えられますから、まさに466条3項のケースに当たると考えられます。つまり、貴社が譲渡禁止特約が存在することを知っていたという理由で、公共工事請負代金の支払いを拒絶される可能性があるということになります。しかも、何らかの理由で取引先に対して請負代金を支払う必要がなくなったというような事由があれば、貴社に対してもそのことを主張することが可能であるということになります(これらの抗弁を放棄して貴社に対して請負代金を支払うことも可能ですが)。

 このような点を考えると、有効に債権譲渡を受けたとしても、必ずしも、貴社が直接請負代金を受領することができることは保証されていないということが言えます。

 しかし、上記のような場合であっても、請負代金を理由もなく取引先に支払わない場合には、貴社が相当の期間を定めて取引先への履行の催告することができます。そして、その期間内に取引先への支払いがなされないときは、請負代金の債務者は、譲受人である貴社に対して譲渡禁止・制限があったことを主張することができなくなります(466条4項)。つまり、この場合には、貴社が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったとしても、直接請負代金の支払いを請求することができるようになります。

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民法改正後、保証契約に関し、どのような場合に公正証書の作成をしなければならないのですか。

 465条の6は、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」と規定しています。したがって、公正証書の作成をしなければならない保証契約は、①「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」と、②「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」のふたつということになります。

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金融機関の融資実務では、経営者等を除く第三者の個人保証を徴求しない潮流がありますが、そうした中で、なぜ、改正民法で、保証契約の締結に先立ち保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示し、公正証書を作成する制度を設けたのですか。

 保証契約は個人的情義等から無償で行われることが通例である上、保証契約の際には保証人が現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であることから、保証人において自己の責任を十分に認識していないまま安易に契約が結ばれる場合も多く、そのため、個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たない状況が続いていました。

 保証人にとって過酷な結果を招くという問題が最も深刻に生じているのは、主たる債務者が事業のための資金を借り入れた債務の保証についてであり、事業のための資金の借入れは、主債務者が法人であろうと自然人であろうと、多額になりがちだからです。そのため、事業のための借入れに当たっての、特に経営に関与しない第三者による保証の問題性は広く認識されるに至り、保証に依存しない融資実務の確立に向けた試みが行われてきました。

 例えば、中小企業庁は、「事業に関与していない第三者が、個人的関係等により、やむを得ず保証人となり、その後の借り手企業の経営状況の悪化により、事業に関与していない第三者が、社会的にも経済的にも重い負担を強いられる場合が少なからず存在することは、かねてより社会的にも大きな問題とされてきております。」という認識を示した上で、信用保証協会が行う保証において経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを原則として禁止しました(平成18年3月31日付け「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」)。

 また、平成25年8月に金融庁が定めた「主要行等向けの総合的な監督指針」においても、経営者以外の第三者の個人保証について、直接的な経営責任がない第三者に債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという指摘があるという状況に鑑み、金融機関には、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立するという趣旨を踏まえた対応を取る必要があるとされ、金融機関に対する監督における着眼点として、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針を定めているか、経営に関与していない第三者が例外的に個人連帯保証契約を締結する場合に、当該契約は契約者本人による自発的な意思に基づく申し出によるものであって、金融機関から要求されたものではないことが確保されているか、などが挙げられていました。

 上記のような中小企業庁、金融庁の対応などの結果、実務上も、事業資金の融資において、主債務者の経営に実質的に関与していない第三者に保証をさせることは減少していきました(部会資料70A等)。

 しかし、一方で、起業をする際に物的担保の対象とするだけの財産を持たない一方で起業を支援しようとする第三者が保証する意思を有している場合などのように、第三者が保証する社会的に有用であるようなこともあり、第三者保証を全くなくしてしまうこともできないという指摘もされたようです。

 そこで、保証人が自発的に保証する意思を有することを確認する手段を講じた上で、自発的に保証する意思を有することが確認された者による保証契約は有効とするという方向性が示されました。

 つまり、保証契約の締結に先立ち保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示し、公正証書を作成する制度を創設したのは、原則として第三者保証を制限する流れの中の例外的措置であると位置づけることができると思われます。

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改正民法では、保証契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示し、公正証書を作成しなければならない場合があると聞きましたが、どのような場合でしょうか。

①事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、又は、②主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、原則として、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないとされました(465条の6)。

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