「被選任者は就任を承諾した」で登記可能と思うのだが

 会社の取締役は、取締役の選任決議のほか、代表者からの就任の申込み及び被選任者の就任承諾があることにより、被選任者は取締役の地位に就く(商業登記ハンドブック第3版384頁)。

 これは、会社と取締役との関係は委任契約であるため、会社の委任契約の申込みと、取締役の委任契約の承諾がそれぞれ存在することによってはじめて委任契約が成立するからである。

 そのため、取締役の就任の登記についても、会社の委任契約の申込みがあつたことを証する書面として取締役選任決議をした株主総会議事録と、取締役の就任承諾書を添付することとなる。

 もっとも、株主総会の席上で被選任者が就任を承諾した場合には、登記申請書において「就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用する。」と記載すれば足りる。

 この取扱いは、代表取締役以外の取締役の就任の登記において、その就任承諾の事実が、議事録作成者である取締役の記名しかない株主総会議事録に記載された場合も同様である(株主総会議事録の真実性は、過料の制裁をもって担保されており、また、自らの記名押印のない書面を就任承諾書として援用することができるのは、旧商法において株主総会議事録をもって監査役の就任承諾書として援用する場合と同様だからである)。

 なお、被選任者が株主総会に出席せず、議長から被選任者の就任承諾についての内諾を得ていた旨の報告があっただけでは、本人の意思表示が伝聞形式で議事録に記載されるにすぎないため、株主総会議事録をもって就任承諾を証する書面とすることはできない(堀恩恵「就任を承諾したことを証する書面としての株主総会議事録の記載」旬刊商事法務1225号48頁)。(商業登記ハンドブック第3版396頁)

 さて、このたび申請した議事録には、「被選任者は就任を承諾した。」との記載があり、代表取締役が議事録を作成して押印している。被選任者は新任取締役であり、総会後に就任するため議事録上の「出席取締役の氏名」にはその名前は記載されていない。

 私は、当然ながら就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用できると考え、何の問題意識もなく申請した。

 ちなみに、取締役候補者は総会出席権限がないのに議場にいること自体がおかしいという意見をお持ちの方もいるかと思うが、議場に誰を入れるかということは議長の議場整理権限に属するので、総会出席権限がない者が総会場にいることは何ら不思議なことではない。

ところが。

 登記官の見解は、「被選任者は就任を承諾した。」との記載では、「議場において被選任者がその場で就任承諾の意思を表明したとは解釈できない。「席上」という言葉を追加しないと登記できない」というものだった。

 もうこれは、法解釈の問題ではなく日本語としてどう読むかという問題である。議事録は議事の経過と結果を記載するものである。したがって、「被選任者は就任を承諾した。」と記載してあれば、そういう事実経過があったのだと考えるのが普通ではないだろうか。

 さて、昨日は台風のため、ジョギングはお休みした。今日は、一昨日より1キロ当たり1分以上早く走ってみた(といっても普通の方がジョギングするより遅いと思うが)。このまま毎日1分ずつ記録をあげていけばすごいことになる。

投稿者プロフィール

古橋 清二
古橋 清二
昭和33年10月生  てんびん座 血液型A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身(途中、上池自動車学校卒業)

昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー浜松ホトニクス(東京一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる
平成2年 古橋清二司法書士事務所開設
平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立
最近、農業にはまってい る (本人は「農業」と言っているが、一般的には「家庭菜園」と呼ばれている)。 耕運機まで所有するなど、道具は一人前だが野菜のできはイマイチ。 本人は、異常気象だとか、土が悪いとか、品種が悪いなどと言って、決して自分の腕が悪いことを認めようとしない。