裁判官の裁量には勝てぬ

 先日、「考えてみれば、被告が50人もいたら訴状の送達に問題が生じるのは必然だった」の中で、次のようなことを書いた。

「多くの場合、訴訟を提起した後に、被告の中に判断能力が衰えている高齢者がいることが判明する。訴状を裁判所に提出すると裁判所は被告ら全員に訴状副本を送達するが、その際に、家族から「本人はとても内容を理解できる状態にはない」という情報が裁判所に寄せられて発覚するのである。

 このような場合、裁判所から原告代理人である私に、「被告の○○さんは高齢で判断能力が劣っており、内容を理解できないということですので検討をお願いします」という電話がかかってくるのである。

 「検討をお願いします」と言われても、相手である被告のご家族に、この裁判のためだけに成年後見人を選任して欲しいなどと言うことはできない。なぜなら、そもそも、この裁判自体、相手方にすれば突然降って湧いたような迷惑な裁判で、原告の都合で起こした裁判であることに加え、いきなり「被告」として訴えられてしまったわけだから、被告のご家族に対し、成年後見人を選任するという重い手続きをとってもらうことは不可能なのである。

 では、「検討をお願いします」というリクエストに対しどのように応えるか。こうした場合、原告の申立てにより、この裁判だけのための当該被告の代理人を裁判所に選任してもらう方法がある。根拠は、民事訴訟法35条の特別代理人の規定だ。」

 実は、これは現在進行形の事件であるが、早速、ご家族に本人の状態と、いつからどこの施設に入っているかについて記載していただいた書面を添付し、民事訴訟法35条の特別代理人の規定をしてもらうよう、裁判所に申し立てた。

 ところが、である。

 今回、裁判所からは、「医師の診断書を出しなさい」という指示がきてしまった。一応息子さんにも聞いて見たが、「いやあ、そこまでは・・・・・・」との回答。だから、訴訟の相手方の家族にそこまで負担させることはできないんですってば。

こういうときは、最後の手段をとるしかない。調査嘱託の申立てだ。

1 嘱託事項
 被告〇〇〇〇の訴訟能力の有無

2 嘱託先
 〒●●●-●●●● 浜松市●●区●●1-1-1
             介護老人保健施設●●●●
                ● ● ● ●  医師
             電話●●●-●●●●-●●●●

3 証明すべき事実
 被告〇〇〇〇に訴訟能力が欠如している事実

4 本申立に至った事情
 原告らは、被告らに対して上記事件を提起しているが、被告〇〇〇〇は、平成27年3月頃から認知症により介護老人保健施設●●●●に入所しており、要介護2の認定を受けている。
 被告〇〇〇〇の長男である被告●●●●の陳述によると、被告〇〇〇〇は自己の財産を管理・処分することができない状況である。
このように、被告〇〇〇〇は認知症が相当程度進んでおり、訴訟能力はなく、本来であれば成年後見人を選任すべき情況にあるとのことである。
 しかしながら、被告〇〇〇〇の家族の協力を得ることができないため、被告〇〇〇〇の訴訟能力の程度を客観的かつ専門的見地から証明する手段がない。
 よって、被告〇〇〇〇の訴訟能力を調査していただきたく、本申立に及んだ。

Leave a Reply

will not be published