遺産承継業務を考えよう

 「市民と法」108号に「遺産承継業務は規則31条業務なのか」を寄稿した。「はじめに」の部分だけを掲載するが、大きな問題になる前に遺産承継業務について、きっちり、正確に議論しておくべきではなかろうか。

はじめに
 平成14年司法書士法改正(以下、「14年改正」という。)にともなって、従来から司法書士も行うことができると解釈されていた他の法律で規制されていない業務[1]のうち、財産管理業務や成年後見業務をはじめとする一定の業務について、司法書士法施行規則31条(以下、「規則31条」といい、規則31条に規定する業務を「規則31条業務」という。)により明文化された。このことにより、近年、司法書士法(以下、「法」という。)3条1項1号から5号までに規定する本来的業務としては説明することが困難な業務について、規則31条を広く解釈して規則31条業務として位置づけようとする考え方が見られ、特に遺産承継業務は規則31条業務の代表的なものとして注目されている。

 このように、社会の急激な変化とともに業務範囲を積極的に広く捉えようとする考えは理解できるが、遺産承継業務が規則31条を拠り所とする附帯業務であるか否かは十分に検証されているのであろうか。仮に、遺産承継業務が規則31条を根拠とするものでないとすると、遺産承継業務を遂行する場合の行動規範は規則31条を根拠とする場合とは異なるのではないかという想定も成り立つ。遺産承継業務が司法書士業務として注目されている今だからこそ、その拠って立つところを議論しておく必要があるのではないだろうか。

 本稿では、まず、司法書士の行う遺産承継業務はどのようなものであるかを定立してみることとする。そして、遺産承継業務と規則31条との関係の検討を試みる。そのうえで、とりわけ遺産分割への関わり方や報酬等についての問題点を指摘してみようと思う。

 本稿は、遺産承継業務が規則31条業務の代表的なものとして注目されている中で敢えて異論を唱えるものであるが、これも司法書士制度をこよなく愛するが故であるのでご容赦いただきたい。もちろん、本稿の意見に係る部分は全て筆者の私見である。

[1] 「注釈司法書士法(第三版)」(小林昭彦・河合芳光 テイハン)281頁では、法3条1項1号から5号までの「本来的業務」に対し、他の法律で規制されていない業務を「附帯業務」と呼称している。

投稿者プロフィール

古橋 清二
古橋 清二
昭和33年10月生  てんびん座 血液型A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身(途中、上池自動車学校卒業)

昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー浜松ホトニクス(東京一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる
平成2年 古橋清二司法書士事務所開設
平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立
最近、農業にはまってい る (本人は「農業」と言っているが、一般的には「家庭菜園」と呼ばれている)。 耕運機まで所有するなど、道具は一人前だが野菜のできはイマイチ。 本人は、異常気象だとか、土が悪いとか、品種が悪いなどと言って、決して自分の腕が悪いことを認めようとしない。